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道具を盗むという“業界最大の裏切り”職人業界の構造問題

2025年11月、北海道釧路市でリフォーム工事中の住宅敷地に侵入し、電動工具9点・約25万円相当を盗んだ男が逮捕されたというニュースがありました(UHB:北海道文化放送)。


同時期には、建設中のマンションに侵入し、**「銅線を盗むつもりだった」**と供述した建築業の男が現行犯逮捕される事件も報じられています(TBS NEWS DIG)。

どちらも小さなニュース扱いかもしれません。しかし、職人として現場に立つ私からすると 「これは業界の根幹を揺らす重大な問題」 です。

なぜか?
それは、この2つの事件が「ただの窃盗」では収まらない、**職人の世界における“禁忌”**を破っているからです。

この記事では、二つの事件が意味するもの、そして私たち職人側から見た「業界の闇と自衛策」を正面から書きます。


■ 事件①:釧路の電動工具窃盗事件──商売道具を奪うという背信行為

報道内容はこうです。

  • リフォーム工事中の住宅敷地に侵入
  • 電動工具9点(約25万円)を盗んだ疑い
  • 被害を受けたのは施工現場の職人たち

電動工具は私たち職人にとって “手の延長” です。
盗まれるというのは、一般の財布を盗まれるのとは意味が違います。

● 職人としての寸評

完全にアウト。
この手の犯罪は 金額の問題ではありません。

  • 電動ドリル
  • インパクトドライバー
  • レーザー墨出し
  • 集塵機

これらは「仕事そのもの」です。

盗まれた翌日、現場に行っても仕事になりません。
段取りはすべて狂う。
職人は信用で動いているため、納期遅延はそのまま評判に響く。

つまり、工具窃盗=職人の信用と生活を破壊する攻撃です。

特に腹立たしいのは「現場を知っている者による犯行」である可能性が高いこと。
工具の価値、置き方、時間帯…
現場の“事情”を知らなければ成立しません。

だから、この種の犯罪は、業界の中でも特に軽蔑されます。


■ 事件②:マンション建設現場の銅線窃盗事件──“プロ”だからこそ悪質

次に、マンション建設現場への侵入事件。

報道では、逮捕された男は建築業を名乗り、
「銅線を盗む目的だった」
と供述しています。

銅線は高値で売れます。
とくに電気工事現場で巻きのまま管理する大径ケーブルは、数十万〜数百万円相当。

この事件が厄介なのは、犯人が“建築業”であったことです。

● 職人としての寸評

職人の知識を悪用する最悪のケース。
内部事情を知っているからこそ、価値・置き場・時間帯を理解している。

盗んだ銅線は、電気工事会社にとって **「材料」であると同時に、
施工遅延を防ぐための
「現場リスク管理」**の象徴です。

銅線が無ければ、次工程(配線、結線、通電試験)が止まる。
工程が止まれば、元請けから下請けへ、下請けから孫請けへ、
遅延罰金や人工(にんく)が雪だるま式に増える。

つまりこれは、ただの窃盗ではなく、
**「現場全体への経済的テロ」**と言ってよいほどの影響を与えます。


■ 二つの事件が示す構造的な問題

ここ数年、リフォーム詐欺や悪質業者の問題が注目される一方で、
同じくらい重大なのが **「現場への犯罪リスクの増加」**です。

共通しているのは以下の5点。

  1. 現場は金になる物が多い(工具・銅線・資材)
  2. 敷地は半開放で、物理的に侵入しやすい
  3. 誰が現場関係者か見た目で判断しづらい
  4. 工程管理が複雑で、盗難の損害額が跳ね上がりやすい
  5. 犯行が“内部事情を知る者”である可能性が高い

実は、現場には

  • 高額工具
  • 未使用資材
  • 産廃の中にも売れる金属類

こうした「換金性の高いもの」が多く存在します。

これを狙う者は、昔から一定数いましたが、
近年は 闇バイト型の犯行や、職人崩れの小遣い稼ぎ が増えています。

つまり、
“職人”という肩書きが信頼の証にならないケースが増えている という現実です。


■ 職人の立場から見る「工具窃盗の重さ」

一般の方には想像がつきにくいかもしれませんが、
職人の工具は単なる“物”ではありません。

  • 10年かけて使い慣れた相棒
  • 現場ごとに調整し、癖をわかった上で使う道具
  • 作業スピードや仕上がりのクオリティの根幹

高級料理人に例えれば、
包丁一式を盗まれるようなものです。

百均で替えが効く世界ではありません。

そのため、工具泥棒は職人界隈では
「最低の裏切り者」
と言われます。


■「建築犯罪の本質」は“責任の所在が不明瞭な構造”にある

ここで、あなたの事業にも関係する本質的な問題を書きます。

近年の建築業界は

  • 1次
  • 2次
  • 3次
  • 4次
  • 5次…

と、多重下請け構造が進み、
現場に誰が来ているのか分からないことが普通になってしまいました。

現場監督ですら、
「今日来る職人の顔を知らない」ということもあります。

この“顔の見えなさ”が、
犯罪を招き、責任の所在をぼかしてしまう原因です。


■ 私からの寸評:「顔が見える職人」以外は信用するな

二つの事件を見て痛感するのは、
「実在性が確認できる職人」だけが唯一の防衛線だということ。

  • 所属
  • 経歴
  • 連絡先
  • 顔出し

これらが曖昧な職人ほどリスクがある。

逆に言えば、

● 社団登録職人は“匿名性”を排除している

だから事件のような「誰だか分からない人間の犯行」を防ぎやすい。

  • 本名で登録
  • 住所・実績を提出
  • トラブル時の第三者窓口がある
  • 研修や倫理規定
  • 背景の明確化

これらをクリアしているからこそ、依頼者への安心が担保されます。

私は、職人としてこの方向は絶対に必要だと思っています。


■ 工具窃盗・銅線盗難事件が教えてくれる教訓

最後に、この二つのニュースから導き出される教訓をまとめます。

① 現場には金になる物が多く、犯罪ターゲットになりやすい

特に工具・銅線・設備資材は狙われやすい。

② 犯行者が“業界の人間”であるケースは珍しくない

内部事情を知るからこそ成立する犯罪。

③ 工事遅延・損害・信用失墜のダメージが大きすぎる

被害額以上の損害が現場全体に波及。

④ 顔が見える職人・責任を明確にできる組織だけが防波堤になる

社団登録職人・地元密着職人などは実在性が担保される。

⑤ 結局“人を選ぶ時代”に戻ってきた

価格だけで選ぶと、こうした犯罪リスクが跳ね返る。


■ 結論:これからの時代は「誰がやるのか」がすべて

工具泥棒も、銅線泥棒も、
「物」ではなく
職人の生活・現場の信用・お客様の安心 を奪う犯罪です。

そして、こうした事件は今後も増えるでしょう。
SNSや闇バイトの普及で、犯行のハードルが下がっているからです。

だからこそ、依頼者側は

「この人は本当に顔と名前を出して責任を持てる職人か?」

という視点で選んでください。

私が社団登録職人を推すのは、
宣伝ではなく、
“犯罪を防ぐための最低ライン”
だと思っているからです。

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