第4話|シロアリ・床腐朽・畳沈み ― 原因を探る
畳が沈む。
歩くとふわつく。
梅雨どきにカビ臭い。
多くの人はまず「畳が悪い」と考える。
しかし実務の現場で見れば、原因の大半は畳ではない。
問題は――床下にある。
■ 畳は“症状”、原因は構造
畳は仕上げ材だ。
建物の最後に乗る部材であり、構造体ではない。
沈みや軋みが出るとき、疑うべき順序はこうだ。
- 大引(おおびき)
- 根太(ねだ)
- 床板
- その上に載る畳
逆ではない。
畳は結果を映すセンサーであって、原因そのものではない。
ここを取り違えると、工事は必ず遠回りになる。
■ シロアリという静かな侵入者

シロアリは湿気と木材を好む。
光を嫌い、床下や壁内を通って静かに侵入する。
日本で被害が多いのはヤマトシロアリとイエシロアリだ。
両者は性質が違う。ここを誤認すると判断を誤る。
・ヤマトシロアリは比較的湿潤環境を好み、被害範囲は局所的になりやすい。
・イエシロアリは乾燥木材も加害し、被害が広域化する傾向がある。
藁床(わらどこ)は餌になる可能性はある。
だが実際の被害の起点は、多くの場合土台や大引から始まる。
構造材がやられているとき、畳は単に沈むだけだ。
■ 床下環境が作る条件
次の条件が重なると、リスクは上がる。
- 床下通気が悪い
- 雨漏り歴がある
- 基礎が低く、土間に近い構造
- 換気口が塞がれている
- 給排水管の微漏水
湿気は目に見えない。
しかし木材の含水率は正直だ。
含水率が20%を超える環境が続けば、腐朽菌が活発になる。
腐朽菌が木材を分解し、強度が落ちる。
そこへシロアリが加われば、被害は加速する。
畳は悪くない。
土台が沈めば、畳も沈む。それだけだ。

■ 沈みの原因は三つ
沈みの原因は概ね次の三つに集約される。
- 大引・根太の腐朽
水分過多により木材が繊維崩壊を起こす。 - シロアリ食害
内部が空洞化し、荷重に耐えられなくなる。 - 床板のたわみ
合板の劣化、釘の緩み、支持間隔過大など。
これを確認せずに表替えだけ行うのは対症療法だ。
症状を隠す行為に近い。
畳を新しくすると、見た目は改善する。
しかし構造が弱ければ、半年から数年で再発する。
そして再度「畳が悪い」と言われる。
順序が逆なのだ。
■ 床が先、畳は最後

床工事とは何か。
- 床板張替え
- 根太補強
- 大引交換
- 防蟻処理
- 湿気対策(調湿材・換気改善)
これらを含む。
費用は畳より高くなることが多い。
だが順序は必ず床が先だ。
構造補修を終え、水平と強度を確保し、その上で畳を敷く。
畳は最終仕上げである。
塗装の前に下地を作るのと同じだ。
構造を直さずに仕上げだけ替えるのは理屈に合わない。
■ 羽アリ=即被害ではない
春から初夏、羽アリが出ることがある。
ここで慌ててはいけない。
羽アリ=被害確定ではない。
シロアリの羽アリか、クロアリの羽アリか。
種類確認が必要だ。
触角の形、羽の長さ、胴体のくびれ。
ここを誤診すると、過剰工事になる。
実際には被害が軽微、あるいは未発生という事例もある。
恐怖で判断すると、合理性を失う。
調査は事実ベースで行うべきだ。
■ 畳屋の仕事は畳だけでは完結しない
畳の交換依頼で伺っても、床下を見る。
沈みがあれば必ず確認する。
畳の厚みを変えるかどうか。
下地調整で済むのか。
それとも構造補修が必要か。
ここを判断するのが本来の順序だ。
畳屋が「畳だけ」見ていては不十分である。
床下環境を把握しなければ、本質的な提案はできない。
畳は文化材であり、仕上げ材であり、生活の触感そのものだ。
だが建物は構造体で支えられている。
沈みの原因を誤ると、信用も沈む。
■ 結論
畳が沈んだとき、疑うべきは畳ではない。
まず床下を見る。
腐朽か。
食害か。
単なるたわみか。
順序を守ること。
構造を直し、最後に仕上げること。
畳は悪者ではない。
畳は結果を教えてくれるセンサーだ。
見た目を直す前に、足元を確認する。
それが本来の仕事の順序である。

床工事とは、床板張替え、根太補強、防蟻処理などを指す。費用は畳より高くなることが多い。しかし順序は必ず床が先。
畳は最終仕上げ。
構造補修の後である。
羽アリが出たら要注意だが、羽アリ=即被害ではない。種類確認が必要。ここを誤診すると過剰工事になる。
畳屋の仕事は畳だけでは完結しない。
床下環境を見て判断する。これが本来の順序だ。
畳のお話 完結版

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