敷居テープの張替え前に知っておきたい3つのこと
襖や障子の下にある「敷居」。
毎日開け閉めをしているうちに、表面に貼ってある敷居テープが擦れたり、浮いたり、めくれたりすることがあります。
見た目だけなら、
「古いテープを剥がして、新しいものを貼れば直る」
と思われるかもしれません。
実際、下地の木がしっかりしていて、表面に余計な成分が残っていなければ、テープの張替えだけで済むケースもあります。
ただし、古い住宅ではそう簡単にいかないことがあります。
敷居テープは、あくまで木部の上に貼る仕上げ材です。
下の木そのものが傷んでいたり、過去に塗られたロウやシリコン系の成分が残っていたりすると、新しいテープを貼っても密着しません。
さらに、古いテープを無理に剥がすことで、敷居の木まで一緒に剥がしてしまうこともあります。
今回は、敷居テープの張替えをご検討中の方に、施工前に知っておいていただきたい3つのポイントを職人目線でまとめます。

1.下の木が傷んでいると、新しいテープを貼っても剥がれやすい
一番注意したいのが、古い敷居テープを剥がしたときに、下の木の表面まで一緒に剥がれてしまうケースです。
敷居は長年、人が踏んだり、襖や障子が走ったりする場所です。
表面は一見きれいでも、古いテープの下では木が乾燥して脆くなっていたり、過去の貼り替えで表面が削れていたりすることがあります。
この状態で古いテープを剥がすと、テープだけではなく、木の薄い表面まで一緒に持っていかれることがあります。
すると敷居は平らではなくなり、細かな凹凸や段差ができます。
テープは、平らな面にしっかり接着して初めて機能します。
下地が凸凹していると、貼った直後はきれいに見えても、部分的に接着していない場所ができます。
そこから少しずつ浮きが出て、剥がれやズレにつながります。
特に注意したいのは、
「新しいテープを貼ったのに、しばらくすると端が浮いてきた」
という状態です。
この場合、テープそのものではなく、下地の木の劣化が原因になっていることがあります。
つまり、敷居テープの張替えで大切なのは、テープを選ぶことよりも先に、
「その下の木が、そもそも貼れる状態なのか」
を確認することです。

2.シリコンやロウが残っていると、粘着剤が効かないことがある
もう一つ、見ただけでは判断しにくいのが、敷居に付着している成分です。
昔から、襖や障子の滑りを良くするために、敷居へロウを塗る方法があります。
また、市販の滑走剤やシリコン系の潤滑剤などが使われている場合もあります。
これ自体が悪いという話ではありません。
問題になるのは、その上から新しい敷居テープを貼る場合です。
ロウやシリコン系の成分は、物を滑りやすくする性質があります。
つまり、接着剤から見れば「付きにくい表面」になります。
見た目には何も付いていないように見えても、木の表面や内部に成分が残っていることがあります。
その状態では、表面を拭いても完全に除去できない場合があります。
新しいテープを貼った直後は付いているように見えても、時間が経つと浮いてきたり、端から剥がれたりすることがあります。
ここは非常に判断が難しいところです。
「掃除すれば必ず貼れる」
「脱脂すれば必ず大丈夫」
とは言い切れません。
既存の敷居が何年使われ、過去に何が塗られてきたかを完全に把握することは難しいからです。
職人が現場で確認しても、目視だけで100%判断できない場合があります。
そのため、既存の敷居にロウやシリコンなどが使われている可能性が高い場合は、テープの張替えをおすすめしないこともあります。

3.古い敷居テープは、ご自身で無理に剥がさないでください
テープの端が少し浮いていると、ついそのまま手で引っ張って剥がしたくなると思います。
ただ、古い敷居テープは無理に剥がさないことをおすすめします。
理由は単純です。
テープと一緒に、敷居の木の表面まで剥がれてしまうことがあるからです。
特に長期間貼られていたテープは、粘着剤が木と強く一体化していることがあります。
表面の木が劣化していると、テープの方が強く、木の方が負けてしまいます。
一度木の表面が大きく剥がれてしまうと、テープの張替えだけでは仕上げられなくなることがあります。
「少し浮いているから全部剥がしておこう」
「自分で剥がしておけば施工代が安くなるかも」
そう考えて作業した結果、かえって補修範囲が広がってしまうこともあります。
気になる場合は、できるだけそのままの状態で見せてください。
今の状態を確認できれば、
- テープ交換で対応できるのか
- 木部補修が必要なのか
- 敷居そのものを交換した方がいいのか
を判断しやすくなります。

敷居テープだけでは直せない場合もあります
ここまで読むと、
「ではテープがダメならどうするの?」
と思われる方もいると思います。
下地の傷みが軽ければ、状態を整えてからテープを施工できる場合があります。
一方で、
- 木の表面が大きく剥がれている
- 敷居そのものが欠けている
- 変形している
- 長年の摩耗で形が崩れている
といった場合は、テープではなく大工工事の方が適していることがあります。
たとえば、敷居そのものの交換や木部の補修です。
これは「高い工事をすすめたい」という話ではありません。
貼ってもすぐ剥がれることが分かっている状態で、無理にテープだけ施工する方が、お客様にとって結果的に無駄になるからです。
私たちも、まずはテープで対応できるかを確認します。
その上で、難しい場合だけ別の方法をご提案します。
「貼れるかどうか」の判断が一番大事です
敷居テープの張替えは、作業だけを見るとそれほど大掛かりなものではありません。
しかし既存住宅の補修では、
「新しい材料を貼る技術」よりも、「今の下地が使えるかどうかを判断すること」
の方が大切です。
新しいテープをきれいに貼ることはできます。
ただし、その下の木が傷んでいれば剥がれます。
表面にロウやシリコンが残っていれば、粘着が効かないことがあります。
そして古いテープを無理に剥がせば、さらに状態を悪くすることがあります。
だからこそ、敷居テープは「とりあえず剥がしてみる」のではなく、今の状態を残したまま確認するのがおすすめです。
敷居テープ張替えについての注意点
既存の敷居は、新品の木材とは違います。
何年使われているか。
過去に何が塗られたか。
何回貼り替えられたか。
どの程度木部が劣化しているか。
それぞれの住宅によって条件が大きく変わります。
そのため、現場を確認した結果、新しいテープを貼っても早期に剥がれる可能性が高い場合は、施工をお断りすることがあります。
また、既存の木部の状態や、過去に使われた薬剤・ロウ等の影響を完全に把握することはできません。
そのため敷居テープの張替えについては、既存の状態によって、施工後の剥がれ・浮き・ズレなどを保証できない場合があります。
この点は施工前に状態をご説明したうえで判断します。
無理に施工して、後からすぐ剥がれてしまうよりも、最初に**「できる・できない」をはっきりさせる。**
その方がお互いに無駄がありません。
よくあるご質問
Q.自分で敷居テープを剥がしてから相談した方がいいですか?
おすすめしません。
古いテープの下で木が傷んでいる場合、剥がす作業そのものが木部を傷める原因になります。
端が浮いていても、できるだけ現状のまま確認させてください。
Q.見た目がきれいなら、そのまま新しいテープを貼れますか?
見た目だけでは判断できないことがあります。
木部の劣化だけでなく、ロウやシリコン系の成分が残っている場合は、表面がきれいでも接着しにくいことがあります。
Q.テープが無理な場合は、必ず敷居交換になりますか?
必ずではありません。
傷み方によって対応は変わります。
テープで施工できる場合もあれば、木部補修や敷居交換などの大工工事をご提案する場合もあります。
まずは現在の状態を見て、必要な範囲だけ判断します。
まとめ|敷居テープは、剥がす前に一度ご相談ください
敷居テープの張替え前に確認したいポイントは3つです。
1つ目は、テープの下の木が傷んでいないか。
2つ目は、シリコンやロウなど、接着を妨げる成分が残っていないか。
3つ目は、古いテープを無理に剥がさないこと。
この3点だけでも、施工後のトラブルは避けやすくなります。
「端が浮いてきた」
「ボロボロになってきた」
「自分で剥がしていいか分からない」
「貼り替えできる状態か見てほしい」
そんな場合は、古いテープを無理に触らず、そのままの状態でご相談ください。
敷居テープで対応できるのか。
木部の補修が必要なのか。
敷居交換などの大工工事を考えた方がいいのか。
現状を見て判断します。
職人夫婦 金沢屋では、襖・障子・畳・網戸などの張替えだけでなく、必要に応じて建具や木部の補修まで対応しています。
「貼ること」よりも、「貼って大丈夫な状態か」を先に確認する。
敷居テープの張替えで、私たちが一番大事にしていることです。
